M・サンデル『これからの「正義」の話をしよう』


著者は政治哲学を専門とするハーバード大の教授。
正義とは?美徳とは?価値とは?幸福とは?
何が一番大事なことなのだろう?ということを問いかける本。


最初に実際の例として挙げられるのは、ハリケーンが襲った町で物資を販売する業者による便乗値上げが正当か不当か、という論争。この論争のように、ある一面から見ると不誠実であり倫理的に問題だと思われる事象であっても、別の面から見ると合理的な帰結となっている場合も少なくない。
人は社会生活において常に何らかの選択を行いながら暮らしているが、選択の判断基準は概して相対的なものである。それでは何を基準として選択を行えばよいのか。その基準のひとつが正義であるとすると、正義とは何かということを徹底的に考え、議論することが、最善の選択を取ることができるようになるための礎となるのである。


全般的に、身近なニュース、話題を題材に採っているので、取っ掛かりはしやすいと思う。
著者自身の主張が少し見えにくいところがあるが、アリストテレスロールズ、カント等の哲学思想について程よくまとめて特徴を解説してくれているので、事前知識なしでも特に問題なく読み進められる。