日置弘一郎/中牧弘允編『会社神話の経営人類学』

会社神話の経営人類学

会社神話の経営人類学


会社という共同体における創業物語や英雄物語の発祥、伝承のプロセスを、神話の成り立ちをメタファーとして分析しようという試み。複数筆者による論文集の体裁を取っている。
経営人類学という学問自体比較的学際的な領域であり、経営学と文化人類学を組み合わせてそれぞれの観点を互いの論説に注入しようとするものらしい。例えば経営学においてはあまり見られない、会社組織を構成する従業員のコミュニティという事象を論考するに際して、コミュニティの成り立ちと様態の変化を観察する文化人類学における方法論を適用するといったようなことだろうか。
神話をメタファーとしてなぞらえると、創業神話、英雄神話という表現がしっくり来る物語もあるものの、中にはあえて神話になぞらえる必要もないのではないかと思える文もある。神話というものが文化史においてどういう意義を持ってきたのかあまり理解していないからだと思うけど、この論文での分析が経営学なり文化人類学においてどういう意義を持つのかもうひとつピンとこないのも確か。
もっと純粋に会社創業物語であってもいいのではないかという気がした。